「生きるように働く」の感想

「生きるように働く」
 
生きている間はすべて自分の時間なのだから_
人気求人サイト「日本仕事百貨」の運営を行っているナカムラケンタさんの本。
 
ナカムラさんのサイトが他と大きく違うのは、その求人記事。職場を訪ね、話を聞き、時間をかけて物語のようまとめた記事は、ただ会社概要や条件を並べただけでは見えてこない、その会社のいいところも大変なところも、ありのままの姿を伝えます。
長い時間を過ごす場所だから、自分が気持ちよくいられる場所に出合って欲しい。生きることと働くことを分けるのではなく、どちらも連続した時間として大切にしてきたナカムラさんの思いが反映されています。
 
以下、響いたところを抜き出しました。
 
世の中にはたくさんの価値観がある。
建ってから深みを増すような、よりよい空間を作る方法はないのだろうか。ある、それはセルフリノベーション。自分たちの手でリノベーションすれば、完成したあとに自分たちの手でやり直すこともできる。竣工のときがピークではなく、だんだんと熟成していく場所になる。まるで植物が育つように場所は成長していく。
 
もしこのままサラリーマンを続けたらどうだろう?安定した人生が続くかもしれない。でも挑戦しなかったことで後悔するような気もした。
それは自分の望む人生じゃない。
やりたいことははっきりしている。でも考えれば考えるほど怖気づいてしまう。
考えするのも良くない。少しくらいバカにならないと独立なんてできないのかもしれない。
だからバーで酔うのも悪くない。
 
人のこころを動かすのはお金やスペックではない。それよりも自分がどう生きたいのか?
どういう時間を積み上げていきたいのか?
そんな未来を想像したいのだと思う。しかも今いる場所からちゃんと繋がっている世界で。
 
気持ちを高めてくれるものは世の中にはたくさんある。例えば小説を読んだら、主人公になったような気持ちになるし、映画に励まされて自分も頑張ろうと思うこともある。それは素晴らしい体験。
でも今は、インターネットで誰もが主人公になれるようになった。殆どの人が知らないyoutuberもブロガーも一部の人にとってはスターであり、アイドルだ。自分でもできるんじゃないかと思えてくる。誰かのインタビューを読んで、憧れるだけでは満足できない人が増えているように思う。
 
いいことばかりを書かない。あるがままの情報を伝える。そっちの方がみんな幸せだと思う。
 
まずはやってみる。いきなり合格点を出せる人はほとんどいないし、30点くらいのスタートなんてよくある。試してみたからこそ、ほかにやりたいことが見つかった、という人もいる。
最初からうまくいかないからといって、あきらめる必要はない。スタートしたあとが肝心で、ひたすらチューニングしていけばいい。
 
生きるように働く人たちは、はじめることができた人だと思う。もしかしたら頭のいい人ほど不完全さが気になってしまってスタートを切ることができないのかもしれない。
でもやってみるしかない。そうすることで自分の得意なことが見えてくるし、自分のやり方
が定まっていく。そうやって、いろんな方法を発見したり、編み出したりしていく。
 
取材中はメモは取らない。とにかく取材する相手に安心してもらいたいから。録音する。
その代わり取材している時は、今起きていることに集中する。
相手がどんなふうに振る舞い、どんな顔をしているのか、相手のことを気にかける。
ちゃんと聞いていることを態度としても表していると、「この人はちゃんと話を聞いてくれるから話そう」ということになるし、話すのが楽しくなってくる。
安心すると、心に浮かんだことをそのまま言葉にするようになるから、文脈がバラバラになることもあるけど、深いところまでたどり着くことができる。
文脈を整えるのは文章にするときでよい。大切なのは、話し手に寄り添いながら、根っこに近い話を引き出すこと。
もう一つは用意した質問だけを聞かないこと。
筋書きもゴールもあらかじめ設定している訳ではない。質問を用意してもそれで視野が狭くならなければよい。大切にしていることは読み手のことを想像すること。
 
赤入れはしない。
二人で編集している。ペアエディティング。
一人が書いた文章を、もう一人と一緒に読んでいく。そして何か違和感があれば、その都度共有する。お互いに情報共有できるし、とても効率的。
 
 
出版社から本を出すには印税7~10%、1万部売れたら大ヒット。
1000円の本を1万部売ったとして、著者には70~100万円。これだけだと生活してくには
心許ない。自費出版は最初に大金がかかってしまう。個人雑誌、本を痛快に金儲けするという長島明夫さんのやり方(インディペンデントな出版)。発行部数2000部、定価1200円ですべて売り切ったとしたら、売上240万円になる。そこから印刷製本代を差し引いたとしても粗利は200万円を超えてくる。
それには4つのハードルを乗り越えることができれば誰でも出版できるということ。
①資金を用意すること②編集・デザインすること③在庫を保管・管理すること④そして流通させること→詳しくは「シゴトヒト文庫」
 
お金をかけなくても、新しいものを用意しなくても、豊かなくらしができる。足下に宝がいっぱいあるんです。
 
以前は売上をどうやってあげるかばかりだった。売ることではなくて、みんなにとって、食べ物はどういう役割を果たすのか。
どうあるべきだろうか。おいしさってなんだろう、ということを考えはじめました。
表面的なデザインよりもおいしい食卓を作ることが大切です。そこから逆算していったら事業スタイルが決まっていった。あとはそれを伝えていくことも大事なこと。
 
放置自転車をスマートに解決するプロジェクト。オピニオンリーダーの人たちに同意してもらって、自転車に「NO」というシールを
貼らせてもらった。これは「僕は自転車を放置しないよ」というメッセージになって、
そうするとみんなかわいいねって貼ってくれる。押しつけがましくなく、自然にポジティブに意識が伝播していく仕組みを作っていく。
 
リノベーションスクールとは→「熱狂するまちづくり」全国から集まった有志たちが数日間、空室の目立つ街に滞在しながら、遊休不動産
(企業活動にほとんど使用されていない不動産)の活用案を提案する。
単に、リノベーションするだけでなく、事業プランを企画し、実現するところまでを目指す。
 
もう新築をバンバン建てる時代じゃなかった。
夢中で目の前の仕事に向き合っていたから、社会のことを見ていなかった。そして新築の注文依頼が殆どこなくなった。
 
提供する人と、それを受け取る人、というように、明確に役割が分担されているよりも、
フラットでゆるやかな関係性があるから心地よい。それを一緒に作り上げていくのが楽しい。
誰もが自分の映画館を作れるサービス「POPCORN」。
 
映画を紹介したい、自分の映画館を作る、自分が観てもらいたい映画を上映することが
できれば、それこそ究極の映画紹介なんじゃないのか?但し、映画館を作ることは並大抵のことではない。今、日本のスクリーン数は伸びている。ただそれはシネコンが増えているから。
ミニシアターや名画座など、単関係の映画館は減っている。
 
ミニカルチャーコンプレックス→本格的な映画館を作る必要はない。
映画館というものは席が固定されているという構造上、他の用途として使用するのは難しい。
フレキシブルに変えることができる空間であるなら、いろいろなことをしながら、ときどき映画を上映する。さらにマルシェを開催したり、ライブをしたり、ヨガ教室やワークショップできるかもしれない。いろんな形で利用できれば、全体として維持継続できるのではないか?。純粋な映画館があってもいいけれど、もっと多様な鑑賞体験があってもいい。
人が少なくなっていく地方では、人が集まれる場所が求められている。
そんな環境の中で、「そこに行けば誰かがいる」という場所をつくることは大事なことだと思う。
つまり機能を集約した場所、小さな複合文化施設、言うなればミニカルチャーコンプレックス
みたいなものを作るのはどうだろう?
「今日は何をやっているのかな?」とふらり訪れてみる。映画の上映をしていたら、
「今日は映画でも観るか」というように、普段あまり観ない人にも鑑賞する機会が生まれるかもしれない。コンビニの商圏は3000人ほど。そのエリアで何とかやっていけるのではないか。うまくいっていないけど。
 
昔は、憧れで行動していたけど、今は響く感じ、共鳴する感じが大切だと思います。
すでにあるものを提供するのではなくて、一緒に作ること、みんなでつくる時代だと思います。